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だからこそ、国土庁も、土地局長の名で「土地関連融資の取扱いについて」という同じ表題の要請を、八五年七月二六日、八六年四月一五日、同一二月一八日に、あいついで大蔵省銀行局長に送った。
腰の重い銀行局長も国土庁の要請の趣旨にそって、同じ表題で、金融会社や金融機関向けに通達を送った。 国土庁の八六年四月一五日付の依頼では、〈東京都及びその周辺並びに主要都市の中心商業地において高い地価上昇が見られる〉と述べ、つぎのように記している。
〈金融機関は、これらの地域において、有効かつ適切な土地利用が図られないまま短期間に当該土地の転売を行う等の投機的な土地取引や著しく適正を欠く価格による土地取引に対する融資を厳に慎まなければならないと考える〉F銀行では、渉外担当者全員に秘密文書の「不動産有効活用工作店内研修会資料集」を持たせ、土地を活用した投機を推奨している。 また、支店備え付けで渉外課長が管理している秘密文書「マーケット別実戦研修指導マニュアル」は、〈個人大口取引推進〉〈富裕層取引推進〉〈貸金工作〉などをうたって、小金持ち向けのマネーゲームや土地投機などを推奨する内容となっている。
中堅以上の渉外担当者のマニュアル「株式取得の手引」や「外償投資の手引」などは、マネーゲーム実戦醤といえる。 従業員にも〈投機またはこれに類する行為をすること〉を禁じていたはずの銀行自体が、いまや投機にたいする感覚が麻陣してしまっている。
日本語の「投機」という言葉の常識的な意味は、〈市価の変動を予期して、その差益を得るために行う売買取引〉(「広辞苑」)であろう。 だが、いまやこの投機が銀行の本業になった感がある。
F銀行は、こうした国土庁の要請や大蔵省通達が頻繁にだされていた最中に、莫大な資金を土地投機に投入した。 同行の貸出金の業種別内訳を見ると、不動産業への貸出金が一兆七六三八億円で他行をしのいで一位となっている。
四年前に比べて三・五倍、二年前に比べても一・三倍で、この一、二年間での増加がきわだっている。 他業種への貸出金も土地がらみが激増しており、実際の不動産がらみの融資は、この何倍にもなっているとみられる。
金融・保険業への貸出金には、ダミー会社を使った土地投機が含まれている。 また、製造業などへの貸出金なども、物を生産するためより、企業のいわゆる「遊休不動産活用策」や土地投機に注ぎ込まれているのが現実だ。

東京都大田区のJR蒲田駅東口の旧国鉄貨物ヤード跡地の落札をめぐる顛末は、F銀行の土地投機がいかに国民や地域住民の利害に反するものであるかを端的に示した。 地元の大田区は、「シティ・ルネッサンス・カマタ」と呼ぶ周辺の蒲田再開発計画を推進していたが、この計画は問題の跡地の利用を中心にしたものだった。
区役所の担当者である企画調整課の高野六雄主幹は、この計画の内容についていう。 「JR蒲田駅の西側では、東急の目蒲線と池上線の路線がとまっている。
東側では京浜羽田空港線がとまっている。 大田区としては、この東西の鉄道をつながるようにし、またコンコースも設けたい。
これが町づくりの基本だったのです」この計画を実現するため、大田区をはじめ東急、京浜の両社、F銀行と同じ芙蓉グループのY信託銀行などが加わって、第三セクターの蒲田開発事業株式会社を設立した。 この再開発計画には地元商店会なども加わっていたが、大企業本意のものであるとの批判も強かった。
八七年三月、計画の実現を左右する跡地の一般競争入札が行なわれた。 国鉄が事前に開いた説明会には五八社がきていたが、入札参加者は落札業者と第三セクターのほかは中小の不動産業者が一社だけだった。
大手不動産会社も、第三セクターに遠慮して参加しなかったといわれている。 第三セクターは二一○億円で応札したが、その約三倍、公示価格の三・四倍の六五六億五六○一万円(坪四四九四万円)という破格の高値で、桃源社に落札されてしまった。

その影響で、周辺の地価も二倍に急騰した。 そして、第三セクターの構成員であり出資者でもあるF銀行が、競争相手の桃源社に一○○億円を融資していることがわかり、同行が二股をかけていたことが問題になった。
この跡地の現在の登記簿謄本を見ると、この土地に抵当権を設定して桃源社に融資しているのは、F銀行とM信託銀行のほか、銀行がバックアップしているリース会社などである。 合わせて、落札価格の七割に近い四五○億円を融資している。
さきの高野主幹はいう。 「F銀行が二股かけたのではないかということだったんですけど、証拠があるわけじゃないからわかりません。
銀行のお話では、落札してから融資したということですけど、私もそんな高額な借金をしたことがないからわかりませんけど、世間的には事前に話があるのではないですか。 よそからみれば二股かけているように見られます。
いずれにしても、それなりに一緒にやっているのに、別口に融資するというのは、シャクのタネだ、シャクにさわる、という気持ちはあるわけでしてね」この問題は、八七年一月二○日の参議院土地問題特別委員会でも、共産党の内藤功議員によって取り上げられた。 内藤議員は、国会法第一○六条にもとづき、端田頭取を証人として呼び、国会で喚問するよう求めた。
同行本店の関係部門である公務部では、このことを知って、蜂の巣をつついたような騒ぎになったという。 行員も、「銀行は世論にはすごく弱いから」という。
地元の大田区議会でも、共産党区議団が追及し、決算委員会でF銀行の関係者を参考人として呼ぶよう動議を提出したが、他党が賛成しなかった。 そのため、一二月一日の同委員会理事会にF銀行の川上晃常務ら四人を呼び、追及した。
F銀行は、東京都と都内各区の指定金融機関であり、特別に深い関係にある。 同行調査部が八五年に出版した『F銀行の百年』にも、つぎのように記されている。

〈東京都関係の業務としては、当行の各支店における税の収納や、本店公務部における収納とりまとめや支払事務があるが、このほかに、都や区の機関の窓口に、本店公務部や最寄りの支店から出向く派出業務がある。 都庁、区役所、都税事務所など都や区の関係の八十カ所と、競走事業所三カ所に約三二○名の行員が派出して業務を行っている〉〈本店公務部長は、毎年開かれる本店公務部全体の親睦の集まりで行員にこう呼びかけている。
「われわれの仕事は、一般の支店とはちがった苦労があると思います。 しかし、われわれはいわば東京都の窓口として都民の皆様にサービスを行ない、公共の役に立っているのです。
そうした使命感と誇りを常に持って仕事に向ってほしいと思います」〉F銀行は、都と各区の財布を預かっており、大田区民の血税の一○○%を預かっている。 だが、行員たちに説いてきたはずの〈東京都の窓口〉として〈公共の役に立つ〉という〈使命感と誇り〉を投げ捨てた。
大田区とともに第三セクターに加わりながら、桃源社に融資して出し抜き、周辺の地価まで暴騰させてしまったのだ。 大田区議会決算委員会での同委員長報告の記録によると、さきの同委員会理事会に出席したF銀行の川上常務らはいい逃れに終始している。

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